聖光学院中学校高等学校

2020.8 校長メッセージ「1学期を終えて」

1学期を終えて

 いつもよりも随分短い夏休みが始まりました。この1学期は登校出来ない期間が2ヶ月以上もありました。Web授業や郵送による試験、分散登校を経て、式典の場で新入生に「入学おめでとう」という言葉をかけることが出来たのは、漸く7月25日になってのことでした。

 今週の日曜日のことです。雨が強く降ったり、急に晴れ上がったりと、相変わらずの不順な天候でした。そうした中で、雨が止んだ時、セミの鳴き声を聞きました。そして、それが今年初めて聞くセミの鳴き声であることに気がつきました。聖光学院の教員になって以来、この時期はいつもキャンプ場にいます。今年は42年目の夏になります。ですから、自宅でセミの初鳴きを聞くというのは、実に落ち着かない、不思議な気持ちを抱かせるものとなりました。

 さて、聖光生はこの夏休みをどのように過ごすのでしょうか。コロナウィルス対策の影響でキャンプや海外研修などの宿泊行事、練習や試合・大会、合宿などのクラブ活動は、ほとんどありません。家で過ごす日々が、きっと多くなることと思います。そうした無聊な日々を前向きに受けとめて、是非この機会に読書をして欲しいと思います。良質な読書は、世の光として人々と世界に良い働きをする人物となるために欠かすことのできない営みであるからです。読書経験の不足は、読解力の欠如につながります。もちろん、やみくもに読書をしても読解力は向上しません。しかし、読み取ろうとする誠意と忍耐をもって、読むことを繰り返す中で、少なくとも、不誠実な誤読は減っていきます。また、多様な読書は、語彙を増やしてくれます。語彙が増えるということは、知識が増えることであり、ものを考えるための材料を手に入れることでもあります。私たちは言葉によってものを考えます。言葉を知らなければ文章の読解力が不足するだけではなく、人の気持ちも理解できなくなってしまうことでしょう。全てを読み取る深い洞察力を磨いて欲しいと思います。答えのあること、レールの敷かれたものばかりに心を奪われる底の浅い人物となってしまわないように、この夏の読書を強く勧めます。本を読んだ後に、物語や記述内容に思いを巡らせ、今度は身の回りの現実に当てはめ、そして再び考える。こうした営みを、時間に余裕のある夏だからこそ、実践して欲しいと思います。そして、この営みを経て獲得した情報が知識や教養として高まってゆくことになります。この経験が私たちに大局観をもたらすことになります。大局観を持つことは責任ある人物には欠かすことのできないことです。将来を期待されている聖光生にはこのような大局観を持つことが求められています。そうした点では今年の夏休みは大きなチャンスです。前向きにチャンスを活かして欲しいと思います。

 コロナウィルスという疫病が蔓延するなどということは私たちはいまだに信じられないことです。疫病という言葉はかつてはよくつかわれていたのですが最近はあまり聞くことがなくなった言葉かもしれません。
 聖書の中で旧約・新約聖書を含めて何か所かこの言葉が使われています。「ルカによる福音書」21章のイエスの言葉を引用します。(フランシスコ会訳より)

「大地震があり、方々に疫病やききんが起こり、いろいろな恐ろしい現象があり、天に大きなしるしが見られる。」

 このように、疫病という言葉が、大地震や飢饉という言葉とともに使われています。

「あなたたちは耐え忍ぶことによって、自分の命をかち取りなさい。」

 イエスの言葉はこのように締めくくられます。
 

 ワクチンも特効薬もない現状では、私たちに出来ることは残念ながら耐え忍ぶことしかないのかもしれません。しかし、明けない夜はないという摂理も忘れてはならないと思います。いかなる時も強く前向きに生きること。こうした胆力も、日々の読書と思考、そして現実の生活を通して身につけていって欲しいと思います。

 最後に「新型コロナウイルス感染症に苦しむ世界のための祈り」を掲げ、今回のメッセージを終えたいと思います。
 

いつしみ深い神よ、
新型コロナウィルスの感染拡大によって、
今、大きな困難の中にある世界を顧みてください。

病に苦しむ人に必要な医療が施され、
感染の終息に向けて取り組むすべての人、
医療従事者、病者に寄り添う人の健康が守られますように。

亡くなった人が永遠のみ国に迎え入れられ、
尽きることのない安らぎに満たされますように。
不安と混乱に直面しているすべての人に、
支援の手が差し伸べられますように。

希望の源である神よ、
わたしたちが感染拡大を防ぐための犠牲を惜しまず、
世界のすべての人と助け合って、
この危機を乗り越えることができるようお導きください。
わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン

希望と慰めのよりどころである聖マリア、
苦難のうちにあるわたしたちのためにお祈りください。

(2020年4月3日 日本カトリック司教協議会認可)