聖光学院中学校高等学校

2016.7 校長メッセージ「宇宙へ、世界へ、各地へ」

宇宙へ、世界へ、各地へ

 2016年7月7日、七夕の日に31期生の大西卓哉君が宇宙に旅立った。若い時分からの夢を実現させたのだが、さらにはそれが全人類の期待を背負ってのミッションなのである。宇宙飛行士になることが決まった時にも、その年度の終業式で在校生に「きちんと準備を重ねていけば、目標はかなえられるよ」と話しかけてくれていたことを改めて思い出す。遥か遠く、カザフスタンのバイコヌール基地で、わが校の校旗を同期の仲間が振ってくれていた。パブリック・ビューイングでは全校生徒が歓声をあげ、先輩の偉業を称えることができた。4ケ月の任務を無事に終了して、地球に戻ってくることを心待ちにしたい。
 今年4月28日には、40期生の有川稔男君が後楽園ホールでボクシングの日本ウエルター級タイトルマッチ10回戦でチャンピオンの座に着いた。本校40期生の彼は、東京大学に進学後、プロボクサーを志し、日本一になったのである。「宇宙飛行士からプロボクサーまで」と表現すればいささか俗っぽいが、卒業生が多様な分野で活躍しているのは、実に誇らしいことでもある。
 近年、「学校に縛り付けない教育」ということを、私は教育方針の一つとして言っている。これは決して、学校で行う教育を否定することではない。学校での教育活動はどれ一つをとっても有意義であり、生徒の成長に役立つことである。一方で、単なる知識を修得するという時代から、自ら考え答えを探し導き出すことが求められる時代にあっては、学び方も多様になってくる。その多様な分野を一つの学校だけで網羅することは勿論できないし、その必要性もないことである。
 ただ、もし視野を広げた生徒たちが求める対象が学外にあるのならば、むしろ積極的にチャレンジさせようと考えているのである。中学二年生で、学内では地歴巡検部の部員であるが、学外活動でFC東京に所属している生徒がいる。かれは5月にはイタリアへの遠征に参加した。また、ロボカップジュニア・ライプチッヒ大会でロボット・コミュニケーション賞を受賞した生徒もいる。さらにレゴブロックの日本大会を勝ち抜いて、ファーストレゴリーグ・フィリピンアイランド・インビテーションでフィリピンに出場した高校一年生もいる。
 近年は、期間が一年やタームというようにまちまちではあるが、海外留学をする生徒も増えてきた。ニュージーランド、アメリカなど従来のホームスティに加えて、個人での選択として世界へ飛び立つ生徒も増えてきた。世界だけでなく、この夏、囲碁将棋部は囲碁でも将棋でも全国大会に出場することが決まった。まさに宇宙、世界各地、日本各地へと、聖光で育ち、育っている子弟が活躍の場を拡げていると思うと、素直にうれしい気持ちになる。
 この文章を書いていると、廊下を何人もの女子高生が通り過ぎて行った。本校は男子校であるのに、と少しいぶかしく思い、職員室に行って先生たちに聞いてみると、ちょうどキャリアデザインの体験講座を開催していたのである。ハーバード大学の学生たちによるワークショップや、ヤングアメリカンズというミュージカルのワークショップなども、最近は女子高と合同で開催している。男女が協働する機会も大切であると考えてのことである。
 先日、同じカトリックの会津ザベリオ中学校が横浜に修学旅行に来るので、生徒同士の交流をしたいと申し入れがあった。もちろん大歓迎で受け入れようと思う。今学期からマレーシアからインターンの女子大生を受け入れているが、彼女たちのおかげで英語版のホームページを作成することもできた。海外から日本に留学する生徒も受け入れたりもした。世界から、そして日本各地から多くの若者が訪ねてくれることもうれしいことである。
 過日、エバーノート日本法人の外村仁会長がシリコンバレーから訪日された。毎年、生徒たちがアメリカ研修に出かけたときにはご指導いただいており、せっかくの機会なので本校の教職員にもお話をしていただいた。次代を担う人材を育む私たちにとっては、次々と刺激される言葉が飛び出してきた。私自身にとって、印象的であった言葉をいくつか紹介しておこう。

「日本は博物館のような国になってしまっていいのですか? 功労者ばかりがいる国、先人が築いた過去の遺産が並んでいる国の事です。」

「エクセルでなんでもこなしてしまう完璧な職人を作ることが教育なのですか。極めすぎて捨てることができず、永続化の道しか選択できない人材を育成し続けてよいのですか。」

「今の日本は問題がないと保証されない限り、何もしないのではないでしょうか。」

「おおかた大丈夫であったらやってみて、問題があったら随時修正するという姿勢でないと創造性は育たないし、解のない答えに挑戦することはできないのではないでしょうか。」

 私たちの目の前にいる生徒たちが、社会に出ていくのは十年先のことである。社会は今以上に加速度的に変化していくことは間違いなく、知識の集積だけでは何の問題解決もできないことは自明の理である。そうした、またいかなる時代であっても、子供たちが光であるよう育成しよう。マタイ第5章の14節から16節は、本校の教育目標でもある。