聖光学院中学校高等学校

2015.5 校長メッセージ「風に吹かれて」

風に吹かれて

 5月2日、3日は恒例の聖光祭であった。両日で1万5千名以上の来校者があり、大盛況のうちに終えることができた。
 今年は、校舎がすべて完成した初めての聖光祭であった。ここ数年は、どこかで工事中の箇所があり、制約も多い中で催行していたのである。一方で、どのように使いこなしていくかを、生徒たちは試行錯誤しながら計画したことであろう。私自身かつて聖光祭の実行委員長でもあったので、行事に対する思い入れも強いかもしれない。それだけに、時として、生徒たちの企画や構想に口を挟みたくなることもある。しかし運営の主体となる高校二年生たちにとっては、高校生活における貴重な経験の機会でもあるので、いつもぐっとこらえることにしている。
 我々の世代であると、学園祭は、青春フォーク真っ盛りの時代であった。『なごり雪』、『神田川』、『学生街の喫茶店』...懐かしい曲をいくつも思い出すことができる。


  答えは、友よ、風の中にある

 

 なかでもボブ・ディランの『風に吹かれて』は、当時を代表するものである。デラシネである彷徨の時代、あの時の自分はどこに?――そんな問いかけを繰り返してしまうことも多くなった。
 山手駅から坂を登り、外国人墓地のつつじの生け垣の手前に、樹齢百年にもなろうとする楠の大木がある。25年くらい前にあまりに大きくなったため、高さは詰められてしまったものの、幹の直径は2メートルを超えようとしている。今はその根元の窪みに、水苔に植え付けたデンドロビウムの花が美しく咲いている。
この通学路をもう44年も眺めながら通ったのだと思うと、不思議なものだ。中学一年生で入学した時も、また卒業する時も、まさかこんなにこの木を見上げながら通学路を歩き続けるようになるとは、予想だにしなかった。
 ボブ・ディランの歌詞もあるが聖書のこんな箇所もある。


風は思いのままに吹く。
あなたはその音を聞くが、
それがどこから来て、
どこへ行くかを知らない。
           『ヨハネ福音書』3-8


 この4月に入学した第58期生諸君は、これからこの丘でどんな学校生活を送り、どのように成長していくのだろうか。中学一年生の将来に、ふと思いをはせてしまうのである。